【完結】梅雨鬱々倶楽部~梅雨と初恋、君の命が消えるまで~


「……あれはなに……? 綺麗……」

「僕の光だよ……」

 繋いでいた手は、自然に離れて……逆に二人は寄り添う。
 抱き締められたナギサの胸で、コノミは綺麗な光を見る。

「ナギサくんの……光……?」

「魂を千切って燃やして……梅雨夢境鯨(つゆむきょうげい)をまた此処に呼ぶんだ……此処の公園は今回の作戦に一番適している」

「ナギサくんの……魂……?」

 コノミを抱き締めて、コノミの顔を見たナギサが少し寂しそうな顔をした。

「はは、そんな怖がらないで……綺麗だって喜んでもらえるかと思ったんだよ……」

「……き、綺麗だよ……でも……」

「魂を千切ってると言っても……ほんの少しだよ。生贄の時の魂が減ると……困るからね」

「……ナギサくん……」

「こんなお返ししかできなくて、ごめんね……」

 お菓子のお返しにお菓子は買えない。
 だから、綺麗だと喜ぶと思って、ナギサはこの光景をコノミに見せた。
 
 こんな残酷な風景を、喜ぶことなんかできない。

 ……でも、コノミは精一杯微笑んだ。

「綺麗……綺麗だよ……ナギサくんの魂はとても綺麗……」

「うん……コノミの魂もとても綺麗だと思う」

 ふっと、おでこにナギサの唇が触れた。

「ありがとう、コノミはきっと大きな樹になれるよ。サナギにもなれない僕の友達になってくれて……ありがとう」

 そして耳元で優しい声が聞こえる。
 
 『さぁ、僕の事はもう忘れて、家へ帰るんだよ……元気でね』
 
 優しい声は、優しいサヨナラの呪文。
 コノミの脳に沁み込んでいく。

 雨が、降り注ぐように……。