このまま抱かれてしまいたい

 痛みで顔を歪めたが、もちろん彼はさする手を止めるはずもなく、左も同様にさすられ、私は激痛を我慢する他なかった。

「右腕上げますね。先程と変化ありますか?」

「あ、痛くないです」

 さっきは右腕を横から真上に上げると肩に痛みが走ったが、今はその痛みがない。ただ鎖骨の下をさすられただけなのに不思議だ。

「それではこちらのマットの上に仰向けに寝てください」

 私は部屋の奥に置かれたマットの上に仰向けに寝転び、彼は天井の照明を少し暗くした。

「腰のあたり触れていきますね」

 彼は私の腰骨に触れて指で長さを測るような仕草をしたり、腰の下に両手を入れたりして、「なるほどなるほど」と小さくつぶやいた。

「結構反り腰ですね。骨盤が前傾していて少し右にも傾いているようです。骨盤の調整していきますね」

「お願いします」

 その後はマッサージガンでお尻をマッサージされたり、太腿の前側を手のひらで圧をかけながら揺らされたり、うつ伏せになって仙骨のあたりを指でさすられたりするなど、様々な施術がなされた。触られる部分によって気持ちよかったり痛かったりして、痛みは我慢できず顔に出てしまっていたかもしれない。

「また仰向けにお願いします」

 彼は私の右側に座り、私の身体の上から両手を回して左腰のあたりを掴んで身体を左右に揺らし始めた。そうかと思うと右手は私の腰を揺らしたまま、左手を私の左肩甲骨のあたりに差し込んだ。左手の指は肩甲骨を軽く掴んでいるような形だ。ゆらゆら揺れながら、何やら抱かれているみたいで気恥ずかしくなり、なんとなく気まずいので、彼と目が合わないように目を瞑った。

 およそ60分の施術が終わり、ソファに座った。なんとなく身体が軽くなったような気がした。