milk or coffee? 〜甘く、苦く、溶かされて〜

一瞬、そんな小さな彼方さんの声が聞こえたような気がした。


「なんか悪かったな。ほな、遥の部屋戻るわ」


左手にミネラルウォーターのペットボトル、右手はズボンのポケットに突っ込んだ彼方さんがわたしのそばを通り過ぎる。


「…ちょっと待ってください、彼方さん!」


遥さんの部屋へ入る手前で、わたしは彼方さんを呼び止めた。


「なに?どないしたん?」


振り返る彼方さん。

わたしは、そんな彼方さんのもとへ。


「これ…、どうしたんですか?」


わたしは、ズボンのポケットに突っ込む彼方さんの右腕をそっと手に取った。

その手首には、包帯が巻かれていた。


こんなに目立つようなケガ、ついこの間まではなかった。


…そう。

わたしが黒ずくめの人に襲われるまでは。


「もしかして…、わたしを守ってくれたときに…」