milk or coffee? 〜甘く、苦く、溶かされて〜

「お疲れさまでした。お先に失礼します」

「「お疲れさま〜」」


そうして、わたしは『Gemini』を出た。


その日は、月が雲に覆われた薄暗い夜だった。

足早にマンションまで歩いていたけど、わたし以外の足音は聞こえない。


…よかった。

やっぱり、この前からのはなにかの勘違いで――。


コツ…コツ…コツ…


そのとき、あの足音が聞こえてきた。


恐怖で一気に体がこわばる。


だけど、もしかしたらわたしと同じただの通行人かもしれない。


気にしないフリをして歩く。


しかし、わたしが止まったら向こうも止まって、わたしが走ったらあとを追うようにして走ってくる。


…こわいっ!!


マンションはすぐ目の前。

逃げるようにマンションのエントランへ駆け込もうとしたとき、だれかに後ろから手首をつかまれた。