milk or coffee? 〜甘く、苦く、溶かされて〜

それからは、この前のようなことはなかった。


――だけど。


コツ…コツ…コツ…


『Gemini』にラストまで残っているバイトのときは、たびたびあの不審な足音を耳にするようになった。

しかも、マンションの掲示板に、不審な男が目撃されたという貼り紙もされていた。


それを見て、背筋に冷たいものが走った。



「みひろちゃん、…どうかした?」


キッチンでぼうっとしていたわたしに、遥さんが声をかける。


「…あっ、すみません。なんでもないです…!」


バイト中なのに、不審な男のことを考えてしまっていた。


なぜなら、今日の上がりもラストだから。


「…なにか悩み事?」


遥さんがわたしの顔をのぞき込んでくる。


「悩み事…といいますか。そうですね…、悩み事になるのかな…」