milk or coffee? 〜甘く、苦く、溶かされて〜

そのとき――。


「…みひろちゃん?」


わたしの名前が呼ばれて顔を上げると、そこにいたのは傘をさした遥さんだった。


「みひろちゃん、…どうしたの!?」

「え…えっと。ちょっと…修羅場って?」

「修羅場?…とにかく、こんなところにいたら風邪引くから!」


遥さんはわたしの体を抱き起こすと、『Gemini』へと連れ帰った。



22時の閉店後の『Gemini』。


「体…、冷えたでしょ?」


そう言って、遥さんがわたしの前に出してくれたのはホットミルク。

丸みのあるマグカップからは、温かい湯気が立ち上っている。


「…すみません、なにからなにまで」


吹っ飛んだ拍子に傘の骨が折れてしまって、ここまで遥さんの傘に入れてもらった。

そのせいで、遥さんまで雨で濡らしてしまうことに。