初恋シンドローム


 ふたつの飴の間で視線を行き来させ、眉を寄せたまま大和くんを見上げた。
 やっぱりと言うべきか、優しい笑顔しか返ってこない。

(好き()()()方……?)

 妙な言い方だった。
 どういうことなんだろう。

 ひとまずそれをさしおいても、先ほどの質問だけじゃなくて、この流れにまで既視感(きしかん)があった。

 今度はわたしがかまをかけられているとでも言うのだろうか。
 いったいどうして?

 彼を疑っていたことに気づかれた?
 まさかその仕返し?

(確かにすごく微妙な、というか嫌な気持ちにはなるかも……)

 わたしは唇を噛み締めながら、また机の上の飴に視線を戻した。
 もう一度ふたつのそれを見比べる。

「じゃあ、こっち……もらうね。ありがとう」

 おずおずとピーチ味の方を手に取った。
 大和くんは「なるほど」とでも言いたげに頷き、またにっこりと笑う。

「うん、どうぞ」

 特に言及されることもなく、あっさりとした反応だった。
 それはそれでどう受け取るべきか分からない。

(どういうつもりなんだろう?)

 袋を開けて飴玉を口に放り込む。
 ますます彼の本心が見えなくなったような気がして、少しだけ息が詰まった。



 午後の授業が始まってから10分くらいが経った。
 何気なく隣を一瞥(いちべつ)したとき、大和くんの様子がおかしいことに気がつく。

(体調……悪いのかな?)

 口元を手で覆ったままうつむいていた。
 不規則な呼吸を繰り返す彼の顔は、色をなくしているように見える。

「大和くん、大丈夫……?」

 小声でそう尋ねると、彼は首を横に振った。
 声を出す余裕もないみたいで、わたしは慌てて手を挙げた。

「せ、先生」

 ────授業中の静かな廊下を彼と歩いていく。
 隣の席だから、という理由でわたしが保健室まで付き添うことなった。

(大丈夫かな……)

 その間も彼の口数は少なくて、心配な気持ちが膨らんで止まない。

「失礼します」

 階段を下りてたどり着いた保健室の扉をスライドさせるけれど、中に先生の姿はなかった。
 ほかに人もいなくて、静まり返っている。

「大和くんはベッドで休んでて。わたし、先生呼んでくる」

 カーテンを閉めておこうと手をかけたものの、歩んできた彼はまっすぐベッドへ向かわなかった。
 ふわ、とふいに後ろから抱き締められる。

「え……っ」