「お願い、記憶から消して!」
好きなことになると周りが見えなくなるのは私の小さい頃からの癖で、彗も知ってること。
でもやっぱり恥ずかしいことには変わりなくて、ねえと縋るような目を向ける。
だけどそんな私の願いも虚しく返ってきたのは、
「いやだね」
なんて低い声だった。
……というか、断るどころか鼻で笑うとは何事ですか!?
「彗のいじわる」
「……どこが」
「だって」
「俺はみなみのそういうところ、嫌いじゃねーけど」
「……っ」
……そんなこと言われたら、何も言い返せないじゃない。
黙り込んだ私を「ほら行くぞ」と彗が急かす。
それでも私は固まったまま。
「……えっと」
だって右手に温かい感覚がして、それどころじゃないというか……。
「なに?」
「いや、彗……手繋いでくれるんだって思って」
何だか気恥ずかしくなってあははと笑う。
そんな私に降ってきたのは、「はあ……」といういつものため息で。
……なんで?
言おうとしたその時。
「俺、一度決めたら妥協したくない性格なんで」
ぎゅっ。
繋がれていた手に力がこもったような気がした。



