小林、藝大行くってよ

 仮にヨリを戻したとしても、結局は遠恋になるやん? 京都と東京やん? 新幹線でも片道514kmやん?

 愛が強火のおれは、いろいろ気になってしまうはずや。そうすると、また学業が疎かになってしまうかもしれへん。

 そやから心に誓ったんや。彼女を作るなら、都内23区に住んどって、いつでもすぐに会える子にするのだと! どや、合理的やろ!

 っちゅーわけで、明日は大切な友人と語り合うために行くんやで。諸君、分かったな? 変な期待をしたらあかんで。これはフラグやないからな。

「よっしゃ、お前に決めたで!」

 ビビっときたTシャツを手に取り、きっちりアイロンをかけた。シワシワはあかん。清潔感が大事なんや。
 
 さて、もったいぶらずに時間を明日に飛ばすで。みんなも、はよ話を進めてほしいやろ?
 ほな、さっそくいこか。

 海荷ちゃんとの待ち合わせ場所は、イオンや。金のない学生さんが遊ぶ場所といえば、大体ショッピングモールやろ。

 カフェもあるしマクドもあるし、映画館もゲーセンもある。こないに暑い日は、外をうろつかずに長時間過ごせる場所がええやん?
 
 ……しかし、妙に緊張してきたで。

 海荷ちゃんに会うのは半年ぶりや。女子は大学に入ると、ガラッと変わるらしいしな。大学デビューってやつや。

 ゴリゴリのギャルになっとったら、どないしよ。ゴングロで頭に花つけて「アゲ~!」とか言うてたら、どないしよ……って、いつの時代やねんッ!

 そもそも、海荷ちゃんやで。ピュアの塊、ピュアの権化とも言える、あの海荷ちゃんやで。あるわけがないッ!

 ふう。タバコでも吸って少し落ち着くか。って、おれはタバコ吸われへんっちゅーの! 未成年ッ!
 
 あかん、とにかく心を静めなければ。なんやっけ。ラマーズ法か。ひー、ひー、ふー……いや、妊婦ちゃうッ!
 それやったら、アレしかないな。奥の手、水の呼吸や! ヒュゥゥゥゥ……

「一佐くん!」

 声が聞こえた。あのころと変わらへん、鈴を転がすような声や。

 来た。海荷ちゃんが来たで。勇気を出して……いや、余裕の表情で、おれは振り返った。

「久しぶり、一佐くん!」
「うう、海荷ちゃんッ! 久しぶりやな!」

 ああ、海荷ちゃんや!
 ゴングロギャルやない、眩しいほどに色白でピュアピュアな、あのころと変わらない海荷ちゃんや!

 ほらな、言うたとおりやろ。思い出は色褪せずに、いまも鮮やかなままやねん。フォーエバー!

「変わってへんなぁ、海荷ちゃん」
「一佐くんは、いい髪色やなぁ。すぐに分かったわ」

 ころころと笑うところも、まったく変わってへん。嗚呼……我が青春よ。