一年半後。
 明日は武尊が帰国すると言う前日。

「五十四キロ……!」
体重計に乗った私は、つい歓声をあげた。

「おめでとう、優希。よく頑張ったね」

 アバターが褒めてくれた。

「ありがとう、Dating!」

 多分、私は笑顔だったと思う。
 Datingは眩しそうな表情を浮かべている。

 色々な出来事があった。

 私をどん底に突き落とした、医療メーカーの令嬢が結婚した。
 (海外に行ってしまった武尊を待てなかったらしい)
 森君に恋人が出来た。

 私が痩せるにしたがって、周囲の目が変わっていく。
『デブネ』とバカにしてきた人達、特に大学生達がデートに誘ってくるようになった。
 森君が睨みをきかせてくれたけれど、手のひら返しは私に苦い想いをさせ。

 治っていた暴食をしてしまった。

「ごめんなさい、Dating……!」

 私が謝ると、アバターは顔を歪ませる。

『優希を傷つけた奴ら、殺してやりたい……!』

 物騒。
 森君はDatingにロボット三原則を教えてないの?
 アバターのテンションの高さに、逆に冷静になった。

『大丈夫? 優希』

 Datingが心配してくれる。

「所詮、見た目なんだよね」
 
 デブだと『空間を占有するな』って睨まれる。
 教室や研究室を歩くと『地震か?』って騒がれる。

 初ギックリ腰以降クセになってしまったようで、ちょいちょい病院に行けば、若い医師に『急激に体重が増えると腰に負担かかりますよ』って言われた。
 先月より五キロ落としたんですけど⁈

「ちょっと痩せたからって、チヤホヤしだして!」

 教授のお供で天麩羅屋さんにいったとき。
 お店が入ってるホテルのスタッフ、明らかに態度を変えてきた。
 研究室の学生達が荷物を持ってくれるようになった。

「私の中身なんて関係ないじゃん……」

 中身は変わってないのに。
 落ち込んでいると。

「優希、愛してる」

 爆弾を落とされた。