「どうしよう、天音くんに連絡がとれないの」
「わかった。とりあえず落ち着いて。ここは人が多いから」
「スマホのバッテリー切れちゃって」
「うんうん、そこのお店入って話そ」
奏空くんになだめられながら大通りの横道にあるカフェに入った。
そこはとても静かなカフェ。というより純喫茶といった感じのイマドキ珍しいお店だった。
皮張りのソファーに、熱帯魚の水槽、店内に漂うコーヒーを挽いた香り。
「それで? 天音とはぐれちゃったんだ」
「うん、あ、あとスマホの充電切れちゃって……」
天音くんに早く連絡しなきゃ……。そうだ!
「奏空くん、お願いがあって」
「うん、なんでも言って」
「よかったら天音くんに連絡してくれないかな」
「……わかった。ここの場所伝えておくよ」
奏空君は快く引き受けてくれた。さっそくスマホを操作している。
「そういえば……どうして私たちがここにいるってわかったの?」
「ん、ああ、それね……実はね」
奏空くんは、私にスマホの画面を見せてきた。
「これ見て、SNSで天音が女の子と歩いてるってつぶやきがあったから、気になってきてみたんだよ」
「ええ!」
そこにはたしかに天音くんと1時間ほど前に行った店の名前が投稿されていた。
「うわ、うわぁ……! ホントにこういうのあるんだ。恥ずかしい……」
「あいつももう少し気を付けてほしいな。悠乃ちゃんにまで迷惑かけることになったんだから」
「奏空くん、天音くんのことはあんまり悪く言わないであげて」
「ん……そうだね、ごめん」
「あ、そういえば奏空くんに謝らなくちゃいけないことあったんだ」
「ん、なに?」
「入学の時……新入生代表のあいさつ、辞退しちゃったことなんだけどごめんね」
奏空くんの顔色が変わる。



