「今日も向井先輩カッコよすぎるよ!! さっき廊下で見掛けたんだぁ!!」
「良かったね、梓」



何だか、向井先輩の本音を聞いてから…先輩が可哀想に思えてきた。


演技って言っていたっけ。


寄ってくる女子たちを喜ばせる為の演技。




「……」



日頃はキラキラと眩しいのに。
雨が降ると、先輩の心にも雨が降る。


そんな先輩の心を…どうやったら晴らせるかな。
何だか最近、そんなことばかり考えている。



「そういえばね、美久。今度思い切って、先輩に告白してみようと思ってるの」
「……告白?」
「うん、先輩は私のこと知らないと思うけれど、好きが溢れて苦しいんだ。この想いを伝えたいって思っちゃって」
「……」



そんなことしたら、また先輩の心に雨が降る。


そう思っても、梓になんて声を掛けたら良いか分からない。





「……良いじゃん、頑張って…」




頑張らなくて良い。
先輩の心、泣いているから。
これ以上困らせたら駄目だよ。



…そんな思い、1つも言えない。




「美久が先輩のこと興味無くて良かった! 他の子たちは嫉妬して背中を押してくれないからさぁ!! 何だか勇気が沸いて来たよ!」




最低で、最悪。

先輩に対しても、梓に対しても中途半端。





…私は、上っ面だけの偽善者だ。