暉明が帰国してまだ1週間もたっていないのに、いろいろな出来事が起こった。
 椿季さんのこと、芳井さんのこと。この数年、ずっと心の中に巣くっていた靄がさっと晴れた気分だ。
 シャワーを浴びて、軽く飲みながら二人でくつろぐ。
「暉くん、全部解決してくれてありがとうね」
「俺は当たり前のことをしただけだ。それより芳井のこと、もっと早くに言ってほしかったな。俺そんなに頼りないか?」
「まさか! そんな風に思ってない。でもボタン一つであの写真が拡散されたらと思うと、どうしても言えなかったの。ごめんなさい」
「これからは隠し事はなしだ」
「うん。全部相談する」
「俺も全部相談する。早速なんだがここ最近、考えていることがあるんだ」
「ん?」
 なんだろう? 仕事の相談?
「俺も子供が欲しい」
「へっ?」
「蒼典も渡会も父親になるんだぞ」
「いや、でもまだ私たち結婚」
「していないのが問題ならすぐに籍を入れよう。式の準備も最短でする」
 なんてせっかちな! やっと親に公表できたところなのに、この人は……。
 でも期待に満ちた目で懇願してくる暉明の背中には、犬のようにブンブンと振られている幻のしっぽが見える。
 ああ、弱いのよね、こういう暉明に。
「わ、わかったわよ。でもそんなにすぐにでき……きゃっ」
 yesの返事と共にソファへ押し倒された。
「愛茉、愛してる」
「ふふふ……私も愛してる」
 今日も長い夜になりそうだ。

[完]