本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

「あの、聞きたいことがあるんですけど」

新宿駅を目指して繁華街を並んで歩きながら私は男の人に尋ねた。

「はい、聞きたいことって何ですか?」

「何処かでお会いしたことありましたっけ……?」

「あ……」

途端に何故か彼の頬が赤くなった。

「は、はい。僕たち……会ったことあります。あの、ファミレスと……公園で」

最後の方は今にも消え入りそうな声だった。

「え……? ファミレスと……公園……あっ! もしかして……!」

そうだ! 私はこの人に泣いているところを見られてしまっていたんだ! それに公園でも落ち込んでる姿を……っ!

「思い出してくれましたか?」

彼ははにかみながら言った。

「はい、思い出しました! な、何だか恥ずかしいですね。情けない所ばかり見られてしまって……」

照れ臭さを隠すために髪を撫でつけた。

「いえ、僕の方こそ……失礼な事言ってしまって……」

「失礼な事?」

「公園で……言いましたよね? 帰る家が無いんですか? って」

「あ……ああ! そう言えば言ってましたね?」

「すみません。あの時、咄嗟に変な事を言ってしまいました」

「そんな、いいんですよ。全然気にしていませんし、むしろ気に掛けて頂いてありがたかったです。確かにあの日はちょっと落ち込んでいたので」

「……」

彼は話している間、黙って私を見つめながら隣を歩いている。何故だろう。その瞳に……どこか懐かしさを感じる。

「ところで、この間は千駄ヶ谷のファミレスで働いていましたよね? そして今日は新宿の居酒屋で働いているんですか? バイト掛け持ちなんて大変ですね。でも知りませんでした。居酒屋のアルバイトは高校生も出来るんですね」

「高校生……」

彼は何だか妙な顔をして私を見ている。え? ひょっとして私、何かまずい事を口走ってしまったのだろうか?

「あ、あの……高校生じゃないです。今19歳です」

「え? そうなんですか!? ご、ごめんなさい! てっきり高校1年生くらいだと思ってました!」

「いいんです。童顔だからよく色々な人に間違えられているので。だけど…・・・」

彼はじっと私を見た後に、何故か顔を赤らめて視線を逸らせた。

「やっぱり……僕より年上だったんですね……」

「え?」

思わず聞き返すと、再び彼は顔を真っ赤にさせた。

「あ、別に悪気があって言ったわけでは無くて、楽しそうにお酒飲んでるな~と思って」

「そうですね、お酒は好きですよ」

そこまで話した時、丁度新宿駅に到着した。夜の10時半を過ぎても新宿駅は相変わらずごった返している。

「あの、総武線ですよね?」

自然と2人で総武線乗り場へ歩きながら彼が尋ねてきた。

「はい。そうです」

「そうですか、ではここでお別れですね」

「千駄ヶ谷には行かないんですか?」

「ええ、今夜は友達の家に泊まるので」

「そうだったんですか……」

そして私は名前も知らない彼と改札で別れることになった。

「それじゃ、失礼しますね」

頭を下げて、三鷹方面行のホームに向かおうとすると声をかけられた。

「あのっ!」

「はい?」

振り向くと、そこには真剣な顔で見つめている彼が立っていた。

「あ、あの……その……」

「?」

「き、気をつけて帰って下さいっ!」

「? ありがとうございます……」

すると彼は私に背を向けると逃げるように走り去って行った――