さよなら、やさしいウソつき

ユキは、部署に戻ると机の上にメモがあることに気づく。
それは、明らかに五十嵐の字だった。

『これは、僕の連絡先だよ。登録よろしくね♪』

ユキは、メモを鞄の中に入れた。
五十嵐は、本気で自分のことを狙ってくると思うと、恐ろしさ半分、不安が半分であった。
スマホを見れば俊哉から連絡が来てた。
『今夜、会えない?夕飯一緒に食べよう』

ユキは、俊哉からの連絡に安心しきって、「OK!」と返事をした。
午後の仕事も頑張ろうとしたのだが、五十嵐の言葉と行動が頭から離れることができなかった。
俊哉に相談しようとしたのだが、自分の私情を挟んでまで彼に迷惑は、かけられないと思い悩むのだった。

定時に上がることができたユキは、俊哉との待ち合わせ場所まで行く。
彼に会うのは、約2カ月半ぶりとなる。
待ち合わせのファミレスに行くと、すでに俊哉がいた。今日は、非番だったのか?それとも夜勤で今から出勤なのか
わからないがラフな格好で待っていた。

「おまたせ。ごめんね。」
「全然。こっちこそ急に食事に誘ってごめんね。」
「大丈夫。今日、仕事大丈夫なの?」
「あぁ。今日、非番で暇だったんだ。1日中、家で映画見たり、散歩したりといろいろしてたけどな。」

高校時代の彼の趣味は、映画鑑賞だったことをユキは、思い出した。
いろんな面白い映画をなんでも知っていて、本当にすごいなぁと思った。
真面目な生徒会長の彼の趣味は、きっと読書だろうなと勝手に想像してたが、意外にも映画鑑賞だったことに
驚いたのは、今でも忘れられない。
ユキの中で勝手に映画関連の仕事に就くのだろうなと思い描いてた。

「中に入ろう。ここのハンバーグ、めっちゃうまいんだ。交番勤務の同僚が教えてくれた。」
「そうなんだ!楽しみ!」

中に入ると家族連れ、仕事帰りの人、カップル、ご年配夫婦などにぎわっていた。
ウェイトレスさんに案内されて、窓際の禁煙席に案内された。
二人でハンバーグ定食を注文した。ドリンクバーでお互い好きなものを持ってきて、食事が来るのを待ってる間
ユキは、言おうか言わないか、迷ってたことを彼に相談してみることにした。

「あのね、今日、会社の先輩に告白されたんだ。」
「え?そうなの?」
「断ったんだよ。断ったんだけど・・・・」
「しつこいってかんじ?」
「うん・・・・」

俊哉は、顎に手を当てて、探偵のように考え、私に提案してきた。

「もししつこくて、ストーカーになったらすぐ俺を呼べ。110番をしたら、ぜってぇすぐユキの元へかけつける。
ただ、家の鍵や夜道は、なるべく明るいところや人通り多い場所を選んで帰るんだ。
俺も夜間パトロールでユキの近所ばかりとは、限らないからなぁ。」
「うん。ありがとう・・・。」
「元気出せ。大丈夫。俺は、お前にとってのヒーローでいるって決めてる。俺は、好きになった女は、一途なんだ。」

よくそんな恥ずかしいセリフがすらすらと出るなぁとユキは、顔が真っ赤になりそうだった。


”好きになった女にたとえ相手がいても奪いたい五十嵐”と”好きになった女に一途な中島”
対照的な二人に挟まれたなと思ったユキは、運ばれてきたハンバーグ定食を食べて、俊哉に自宅まで送ってもらった。
この光景を妬ましく見ていた人物がいたとは、気づきもしなかったのだった。