さよなら、やさしいウソつき

一瞬、時が止まった。

ユキは、たしかに五十嵐のこと好きだったが、今は、お付き合いしてる人がいる。
困惑していると

「もしかして、ほかに好きな人でもいるのかい?」
「は・・・はい・・・。そう・・・です。」

歯切れの悪い返事に五十嵐は、「ふぅーん」と言った。

「そうなの。でも、僕は、あきらめないよ。話、変わるけど、企画採用されたときにあげた
ボールペン、どうしたの?気に入らなかった?」

ユキは、由奈に盗られたととても言い出せなかった。由奈が盗ったという証拠も確信もないからだ。
俯いて、泣きそうになると、五十嵐は、見抜いたように聞いてきた。
「もしかして、斎藤に盗られたとか、かな?」
「なんでわかるんですか?」
「勘とでも言おうかな?斎藤のデスクに今まで見覚えのないボールペンがあって、たしか、僕がユキに
あげたボールペンだと思ったんだ。そこでユキは、由奈を見た。明らかに動揺してたからね。違う?」

ユキは、驚きで涙も止まった。
さらに五十嵐は、続ける。

「由奈がユキに小さな嫌がらせしてることもわかってる。僕は、いつでもユキの味方でいる。たとえお付き合いしてる人が
いようと。ほしい女は、たとえ相手がいても奪う、それが僕なんでね。」

五十嵐は、ユキの額にチュッと軽く口づけて、去って行った。

ユキは、ずっと驚きっぱなしでお昼食べることも忘れてしまった。