翌朝、ユキは、スマホの電源をつけると、母親からだったり、友人からだったりいろんな人から連絡が入ってることに気づいた。
まずは、母親に電話をかけた。
「もしもし!ユキ!会社の人から風邪をひいてるって連絡が来て心配したのよ。」
焦りと心配の声で話す母親に申し訳なさと嬉しさで涙が出た。
言葉を発しようとしたが、なぜか声が出なかった。
「あ・・・あぁ・・・」
「もしもし?ユキ?声、どうしたの?」
「おか・・・さ・・・」
声が出ない。「お母さん。大丈夫だよ。」といいたいのに言えない。
声が出ないという事態を察したのか、母親は、「今から自宅へ向かうから待ってて!」と電話は切られた。
20分後、インターホンが鳴ったので、ユキは、出迎えると真っ先に抱きしめられた。
大好きな母親の匂いだとわかると、涙が出て、止まらなかった。
「ユキ、一度、病院へ診断してもらいましょう。もしかしたらあなた、機能性発声障害かもしれないわ。」
元看護師だった母は、自分に隠されたもう一つの病を申告した。
母親と一緒に大きな病院に受診することに。
ベテラン医師から「機能性発声障害の可能性がありますね」と言われた。
ユキは、絶望した顔をするが、医師は「ストレスとなった原因が解決すれば完治することも珍しくありません。」
と続けてくれた。
ユキの母は「そうですか」と少し安堵してた。
病院からの帰り、ユキの母は「診断書ももらったし、会社に提出して、実家で療養しましょう。大丈夫よ」
と実家での療養を提案してくれ、ユキは、「うん」と答えるように首を縦に振った。
「(一人だと抱え込みすぎるかもしれない。お母さん、お父さんと一緒ならきっと大丈夫)」
と思ったが、ユキは、あることを思い出した。
スマホを取り出し、文字を打って、母親に見せた。
<彼氏が浮気してるかもしれなくて、興信所を頼ってる。連絡が来るかもしれないから代わりにお願いできる?>
文字を見たユキの母は、驚愕したが、すぐに「わかったわ。」といったのだった。
実家の北海道に帰省したユキは、自然豊かな江別市は、大好きな場所である。
ユキは、深呼吸をして、「帰ってきたんだな」と改めて思った。
「ユキ、おかえり」
60代の父が出迎えてくれた。事情は、すべて母から聞いてるのだろう。これ以上何も聞いてくることなかった。
ユキは、リビングで横になった。
いろいろありすぎて、本当に疲れたのだ。
母は、台所で飲み物の準備をしてくれている。看護師だった母は、面倒見もよく人の体調不良をよく気づく。
「はい。ユキ。温かいココア。あまり熱すぎるとよくないかもだから少しぬるいかもだけど。」
「<ありがとう。>」
スマホで感謝を伝えた。
「ユキ、いろいろ大変だったわね。相談してくれればよかったのに・・・。会社で窃盗されたり、刃物で刺されそうになったり・・・・。本当に無事でよかった。でも次からは、ちゃんと相談してちょうだいね。」
父は、母の横で話を聞いて、俯いてる。
たぶん、悲しんでるんだろうな。申し訳なくて私も泣きそうになる。
私には、姉がいたのだが、姉は、生まれてから3歳でガンになって死んだ。赤ちゃんだった私は、何も覚えてない。
優しかったということだけは、母から聞いてる。
仏壇には3歳の姉の遺影がかわいく笑ってる。
「あなたは、私たちにとってかけがえのない一人娘。お姉ちゃんも大事だけど、お姉ちゃん、星になってしまって
ユキだけでも元気でいてほしいのよ。」
母は、悲しげな声で話す。
ずっと黙ってた父の口が開いた。
「ユキ。東京で一人暮らしすると聞いて本当は嫌だったよ。江別市でいい会社に入ればそれでいいのになって思った。
ユキは、東京で頑張りたいと言ったから父さんも意思を尊重したんだ。江別市はいいところだ。自然豊かで人も温かい。
一度、江別市の実家に戻って、やり直すってのは、どうだ。ゆっくり考えなさい。東京であれだけ危ないことや酷い裏切りにあったんだ。もう帰ってきてほしいというのは、お父さんにとっての本音だけどな。無理強いはしない。」
「<うん。わかったよ。>」
声を失ったユキは、改めて両親に迷惑かけてるんだと痛感したのだった。
夕飯は、母が温かいうどんを作ってくれた。二人は、一生懸命、今まで起こった面白い出来事を話してくれた。
母は、テレビショッピングで買い物に失敗して、大変だったと父が話した。
カニを一杯買ったつもりが10杯も買ってしまい、お金が大変だったと笑いながら話した。
ご近所さんに配ったりして結果オーライだったと母は、言った。
「<そうなんだ(^^)大変だったね>」
食事中のスマホは行儀悪いと思ったため、スケッチブックに文字を書いて、会話をした。
お風呂に入って、寝るとき、母に声をかけられた。
「ユキ。久しぶりに一緒に寝ない?お父さんも誘ったんだけど、『いびきがうるさいから、ユキはゆっくり休めないだろう』って
断られたけど」
「<うん!いいよ!>」
久しぶりに母親と寝る。ユキは、子供の頃思い出しながら、少し懐かしい気持ちに浸ったのだった。
「ユキ、明日、動物園に行かない?たくさん楽しいことして、ユキの声取り戻そうって提案したの。お父さんは、仕事で行けないけど、どう?」
「<うん!行きたい!>」
「よかった。おやすみなさい。」
夢を見た。俊哉と高梨の夢だ。俊哉と高梨が目の前でキスをする夢だった。
会話までは聞こえないが、明らかに見せつけてるような感じがして、悲しくて、苦しかった。
待って!行かないで!俊哉!どうして?私じゃ不満だったの?
出ない声にいら立ち、苦しくなった。
叫びたい声が出なくて、悔しくなった。
「―――キ!」
誰か私の名前を呼んでる?
「ユキ!」
お母さんが呼んでる。
「ユキ!ユキ!」
目を覚ましたユキは、焦った顔の母がいた。
「大丈夫?過呼吸らしい症状があったからあわてて起きたの。ちょっと水を取ってくるから待ってて」
母は、急いで一階に降りて、水を取りに行った。
ユキは、先ほどの夢を思い出す。
本当に嫌な夢だった。あの夢が現実になりそうで、胸が苦しくなった。
「ユキ。ゆっくり深呼吸して」
すー、はーとゆっくり吸って、吐いた。
だんだん心が落ち着いて、水を飲む。
「落ち着いた?」
頷いたユキは、先ほどの夢の内容を書いて母に見せた。
「ユキ、本当に俊哉君のこと好きだったのね。悔しいわね。大丈夫よ。私もお父さんもみんなユキの味方よ。
一人じゃない。わかってくれる?」
優しく、あたたかい母の声に安心して涙が出た。
久しぶりに母の腕の中で寝たユキは、安堵しきっていたのだった。
翌朝、仕事に出かける父を見送り、ユキと母は、動物園へ出かける準備をした。
母の運転する車に乗り、少し窓を開けた。
綺麗な空気を吸い込むとまた声が出そうな気がしてならなかった。
「あ・・・・あ・・・・」
出なかった。思ってた以上に出なくてちょっと悔しいと思った時、ユキの母が
「まだ無理しちゃダメ」とたしなめたのだった。
動物園につき、料金を払って、旭山動物園に入った。
久しぶりに来た動物園は、とても楽しかった。
今まで嫌だったこと、辛かったこと、すべて忘れられた。
母と一緒にはしゃいだユキは、心から笑顔が取り戻せたような気がしてならなかった。
ウサギとのふれあいコーナーにいるとき、スマホが鳴った。
ユキは、表示された相手を確認した。「興信所」からだった。
母は、ユキからスマホを借りて、電話に出た。
「ユキの母です。娘が機能性発声障害患って、声が出なくて私が代わりに出ました。」
そう言って、ユキの母は、少し距離を置いて話した。
ユキは、電話後の話が怖くて少し身震いをしたのだった。
まずは、母親に電話をかけた。
「もしもし!ユキ!会社の人から風邪をひいてるって連絡が来て心配したのよ。」
焦りと心配の声で話す母親に申し訳なさと嬉しさで涙が出た。
言葉を発しようとしたが、なぜか声が出なかった。
「あ・・・あぁ・・・」
「もしもし?ユキ?声、どうしたの?」
「おか・・・さ・・・」
声が出ない。「お母さん。大丈夫だよ。」といいたいのに言えない。
声が出ないという事態を察したのか、母親は、「今から自宅へ向かうから待ってて!」と電話は切られた。
20分後、インターホンが鳴ったので、ユキは、出迎えると真っ先に抱きしめられた。
大好きな母親の匂いだとわかると、涙が出て、止まらなかった。
「ユキ、一度、病院へ診断してもらいましょう。もしかしたらあなた、機能性発声障害かもしれないわ。」
元看護師だった母は、自分に隠されたもう一つの病を申告した。
母親と一緒に大きな病院に受診することに。
ベテラン医師から「機能性発声障害の可能性がありますね」と言われた。
ユキは、絶望した顔をするが、医師は「ストレスとなった原因が解決すれば完治することも珍しくありません。」
と続けてくれた。
ユキの母は「そうですか」と少し安堵してた。
病院からの帰り、ユキの母は「診断書ももらったし、会社に提出して、実家で療養しましょう。大丈夫よ」
と実家での療養を提案してくれ、ユキは、「うん」と答えるように首を縦に振った。
「(一人だと抱え込みすぎるかもしれない。お母さん、お父さんと一緒ならきっと大丈夫)」
と思ったが、ユキは、あることを思い出した。
スマホを取り出し、文字を打って、母親に見せた。
<彼氏が浮気してるかもしれなくて、興信所を頼ってる。連絡が来るかもしれないから代わりにお願いできる?>
文字を見たユキの母は、驚愕したが、すぐに「わかったわ。」といったのだった。
実家の北海道に帰省したユキは、自然豊かな江別市は、大好きな場所である。
ユキは、深呼吸をして、「帰ってきたんだな」と改めて思った。
「ユキ、おかえり」
60代の父が出迎えてくれた。事情は、すべて母から聞いてるのだろう。これ以上何も聞いてくることなかった。
ユキは、リビングで横になった。
いろいろありすぎて、本当に疲れたのだ。
母は、台所で飲み物の準備をしてくれている。看護師だった母は、面倒見もよく人の体調不良をよく気づく。
「はい。ユキ。温かいココア。あまり熱すぎるとよくないかもだから少しぬるいかもだけど。」
「<ありがとう。>」
スマホで感謝を伝えた。
「ユキ、いろいろ大変だったわね。相談してくれればよかったのに・・・。会社で窃盗されたり、刃物で刺されそうになったり・・・・。本当に無事でよかった。でも次からは、ちゃんと相談してちょうだいね。」
父は、母の横で話を聞いて、俯いてる。
たぶん、悲しんでるんだろうな。申し訳なくて私も泣きそうになる。
私には、姉がいたのだが、姉は、生まれてから3歳でガンになって死んだ。赤ちゃんだった私は、何も覚えてない。
優しかったということだけは、母から聞いてる。
仏壇には3歳の姉の遺影がかわいく笑ってる。
「あなたは、私たちにとってかけがえのない一人娘。お姉ちゃんも大事だけど、お姉ちゃん、星になってしまって
ユキだけでも元気でいてほしいのよ。」
母は、悲しげな声で話す。
ずっと黙ってた父の口が開いた。
「ユキ。東京で一人暮らしすると聞いて本当は嫌だったよ。江別市でいい会社に入ればそれでいいのになって思った。
ユキは、東京で頑張りたいと言ったから父さんも意思を尊重したんだ。江別市はいいところだ。自然豊かで人も温かい。
一度、江別市の実家に戻って、やり直すってのは、どうだ。ゆっくり考えなさい。東京であれだけ危ないことや酷い裏切りにあったんだ。もう帰ってきてほしいというのは、お父さんにとっての本音だけどな。無理強いはしない。」
「<うん。わかったよ。>」
声を失ったユキは、改めて両親に迷惑かけてるんだと痛感したのだった。
夕飯は、母が温かいうどんを作ってくれた。二人は、一生懸命、今まで起こった面白い出来事を話してくれた。
母は、テレビショッピングで買い物に失敗して、大変だったと父が話した。
カニを一杯買ったつもりが10杯も買ってしまい、お金が大変だったと笑いながら話した。
ご近所さんに配ったりして結果オーライだったと母は、言った。
「<そうなんだ(^^)大変だったね>」
食事中のスマホは行儀悪いと思ったため、スケッチブックに文字を書いて、会話をした。
お風呂に入って、寝るとき、母に声をかけられた。
「ユキ。久しぶりに一緒に寝ない?お父さんも誘ったんだけど、『いびきがうるさいから、ユキはゆっくり休めないだろう』って
断られたけど」
「<うん!いいよ!>」
久しぶりに母親と寝る。ユキは、子供の頃思い出しながら、少し懐かしい気持ちに浸ったのだった。
「ユキ、明日、動物園に行かない?たくさん楽しいことして、ユキの声取り戻そうって提案したの。お父さんは、仕事で行けないけど、どう?」
「<うん!行きたい!>」
「よかった。おやすみなさい。」
夢を見た。俊哉と高梨の夢だ。俊哉と高梨が目の前でキスをする夢だった。
会話までは聞こえないが、明らかに見せつけてるような感じがして、悲しくて、苦しかった。
待って!行かないで!俊哉!どうして?私じゃ不満だったの?
出ない声にいら立ち、苦しくなった。
叫びたい声が出なくて、悔しくなった。
「―――キ!」
誰か私の名前を呼んでる?
「ユキ!」
お母さんが呼んでる。
「ユキ!ユキ!」
目を覚ましたユキは、焦った顔の母がいた。
「大丈夫?過呼吸らしい症状があったからあわてて起きたの。ちょっと水を取ってくるから待ってて」
母は、急いで一階に降りて、水を取りに行った。
ユキは、先ほどの夢を思い出す。
本当に嫌な夢だった。あの夢が現実になりそうで、胸が苦しくなった。
「ユキ。ゆっくり深呼吸して」
すー、はーとゆっくり吸って、吐いた。
だんだん心が落ち着いて、水を飲む。
「落ち着いた?」
頷いたユキは、先ほどの夢の内容を書いて母に見せた。
「ユキ、本当に俊哉君のこと好きだったのね。悔しいわね。大丈夫よ。私もお父さんもみんなユキの味方よ。
一人じゃない。わかってくれる?」
優しく、あたたかい母の声に安心して涙が出た。
久しぶりに母の腕の中で寝たユキは、安堵しきっていたのだった。
翌朝、仕事に出かける父を見送り、ユキと母は、動物園へ出かける準備をした。
母の運転する車に乗り、少し窓を開けた。
綺麗な空気を吸い込むとまた声が出そうな気がしてならなかった。
「あ・・・・あ・・・・」
出なかった。思ってた以上に出なくてちょっと悔しいと思った時、ユキの母が
「まだ無理しちゃダメ」とたしなめたのだった。
動物園につき、料金を払って、旭山動物園に入った。
久しぶりに来た動物園は、とても楽しかった。
今まで嫌だったこと、辛かったこと、すべて忘れられた。
母と一緒にはしゃいだユキは、心から笑顔が取り戻せたような気がしてならなかった。
ウサギとのふれあいコーナーにいるとき、スマホが鳴った。
ユキは、表示された相手を確認した。「興信所」からだった。
母は、ユキからスマホを借りて、電話に出た。
「ユキの母です。娘が機能性発声障害患って、声が出なくて私が代わりに出ました。」
そう言って、ユキの母は、少し距離を置いて話した。
ユキは、電話後の話が怖くて少し身震いをしたのだった。



