さよなら、やさしいウソつき

ユキは、電話を終えると一気に肩の力が抜けた。
あとは、部長の誤解を解くだけなのだが、警察と弁護士が会社に説明しに行ってくれるとのことで
信じて待つのみだ。

ユキ自身は、もう会社を辞めて転職したいと考えているのだが、新卒で入ったばかりなので印象が悪くなるため
我慢するしかない。
いろいろあったせいでユキは、夕飯や風呂をすませて、すぐに眠りについた。

翌朝、スマホを見ると会社から連絡がきた。
電話に出てみると、部長ではない違う男性の声だった。
「宮島ユキさんの電話でお間違いないですか?」
「はい・・・・」
「この前から大変、辛い思いさせて申し訳ありませんでした。私は、社長の藤田なのですが、覚えてるでしょうか?」

藤田・・・ユキは、寝ぼけた頭をフル回転させて思い出した。
入社式で会った社長だ。入社以来、会ってないので覚えてなかった。

「はい。どうしましたか?」
「君の部署の部長を懲戒解雇したことを報告いたします。もちろん、宮島さんの懲戒解雇は、帳消しにさせてもらったよ。」
「そう・・・ですか。私、あの会社に戻れるんですか?」
「そうだよ。君の働き、君のアイディア発想力、わが社にいてほしい。明日にも来てほしい。新しい部長、新しい人材の紹介があるから、待ってるよ。」

社長との電話を終えると、ユキは、さっそく母に電話をした。
母は「もしもし」と出てくれた。

「お母さん。私、懲戒解雇、帳消しになったよ。」
「良かった。よかった。本当に。弁護士さんが不当解雇させたことでこちらに慰謝料払うように請求してくれたのよ。」
「本当。ありがとう。お母さん、お父さん」

母と泣きあったあと、電話を切り、ユキは、明日の出勤に向けて、体力づくりのため、外に出てランニングをしたりした。
「俊哉にも感謝しなきゃ」

俊哉がいる交番に立ち寄った。いたのは、俊哉と同期の警官のみだった。
「すみません。あの・・・中島俊哉さんいますか?」
「中島?中島なら今日、家の用事で休みをもらってるよ。伝言あったら伝えようか?」
「いいえ・・・。私から連絡入れますので。お忙しいところ、ありがとうございました。」

ユキは、一礼して交番を後にした。用事があるのならば仕方ない。
スマホを出して俊哉の名前をタップしてメッセージを入れる。
<いろいろ助けてくれてありがとう。おかげで仕事にも復帰できそうだよ。>

送信を押した。あとは、返事を待つのみだ。

ユキは、俊哉からの返事を気長に待ちながら、自宅へ帰った。