降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

こういうの……すごくドキドキしちゃう。


桐生さんの優しさに触れるたび、鼓動が速くなって、なんて表現していいのか分かんないけど、グワッとする。


「なんっだそれ~!!」

「ガハハッ!!マジやべぇーじゃん!!」


前からド派手な2人組が歩道を占拠する勢いで歩いて来ている。

あの感じだと、避ける気なさそうだなぁ。多分、私にぶつかってきそう。

そう思った時、私の腰に手が回ってきて、優しく車道側に移動させられた。 


・・・・桐生さんの触れたところがアツい。


「でさぁ!!」


── ドンッ!!


案の定、桐生さんにぶつかったド派手な男。


「オイ。痛ってぇな!!」

「……って、おい!!馬鹿か!!やめとけ!!」

「あ!?んだよ!!」

「いいからオマエ!!もう黙れって!!」


制止してる人は桐生さんの顔色を伺って、怯えている様子だった。

この人、多分……桐生さんが“何者”か……知ってるんだ。

桐生さんを見てこんなにも怯えるなんて……。


「あ!?ビビってんのかぁ!?ったく。ちょーーっとイイ女連れてるからって調子こくんじゃっ……」

「マジでやめろって!!すっ、すんません!!」


桐生さんは顔色ひとつ変えずに、私の背中に手を添えて歩き始めた。