降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

めちゃくちゃ食い気味な反応をした俺に、若干引き気味な梓。


「ええ?本当かなぁ?こんな綺麗な子、同世代の男が黙って指咥えて見てるだけなんて、いやぁ……ありえないんじゃない?」


雄大がごもっとなことを言ってやがる。

いや、マジでありえねぇだろ。

これで男の一人や二人いたことがねぇとか……そんな話あるわけがねえ。


「いやいや、そんな褒めても何もでませんよ~」

「んーー。梓ちゃんレベルの子が彼氏いないって……訳あり?」

「えっと……まぁっ……」

「おい、雄大。余計な詮索すんな」

「……ごめんごめん。そりゃ色々あるよね」


訳ありでしかねーだろ、そんな状況。

まあ、俺としては“良かった”の一言に尽きるけどな。

梓はまだ、“他の誰かのモノにはなっていない”。

この事実が俺を高揚させる。




────── 梓、お前が“欲しくてたまらない”。