降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

・・・・つーか、なんでお前らが並んで歩いてんだよ。

コイツらが並んでる後ろ姿を見ると、モヤモヤするわイライラするわで散々だっつーの。


「ははっ。不破さんって面白いですね」

「ええ?梓ちゃんもなかなかだけどね~」


いつも俺に向けていた笑顔を雄大にも向けるんだな。


──── 気に入らねえ。


「……なっ!?」


気付いた時には梓の腕を掴んで引き寄せていた。


「び、びっくりしたぁ……。どうしたんですか?」


驚いた顔をして、俺を見上げてくる梓。


「…………いや、悪い」


冷静になって自分のヤバさに気付く。

つーか、無意識に体が動くとかヤベぇだろ。


「……海老……嫌いでしたか……?」


・・・・ちげーよ。


そんな申し訳なさそうな顔をして、ズレたこと聞かれても反応に困んだろうが。


「嫌いじゃねぇ」

「そ、そうですか……」

「くくっ。自分で動きなよ、誠。そんな引っ張ったりしなくても~」


雄大はおそらく『そんな引っ張ったりしなくても、誠が梓ちゃんの隣へ来れば良かっただけじゃん。ま、咄嗟に手が動いた……みたいな感じだろうけど?くくっ。余裕がないねぇ~』って言いてぇんだろうな。