降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

まあ、良くなきゃあのマンションの最上階には住めねーわな。

金に苦労する……とは全く無縁な環境。こういう奴は高確率で金銭感覚バグってやがるが、梓はそうでもなかったらしい。

ま、ぶっちゃけその辺はどっちでいい。

梓なら何だっていい……と思う俺は、かなり重症なのかもしんねえな。


「薄々お察しかと思いますが、私ひとり暮らししてるんです。どうしてもって……私の我が儘で。だから、少しでも節約しないとなーって」


『あ、これ安いですよ~』なんて言いながら、何でもなさそうに振る舞う梓。

まあ……色々あるわな。

この件は俺から根掘り葉掘り聞くつもりはねえ。梓自身が俺に話したいと思った時でいい。


──── 俺を頼れよ。なんだってしてやんのに。


「── さん。桐生さん」

「あ、ああ……」


何故か海老を持って俺を見ている梓。


「海老も安いですよ!海老入れちゃいます?結構美味しいですよ」

「そうか」

「“たこ焼き”ならぬ“えび焼き”か~。いいね!」


そっから雄大と梓が『えび焼きは~』とかなんちゃら言って盛り上がってやがる。

俺を差し置いて、俺の数歩先を横並びで歩く梓と雄大。