降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「え、あっ、ちょっ、桐生さん!!傘!!」


俺が早足で外へ向かうと、慌てて梓がついてきた。


「もぉーー、子供じゃないんですから、傘くらいさしてくださいよ」


なんて言いながら俺の隣に来て、傘を押し付けてきた。


「くくくっ。こりゃ面白いことを聞いちゃったなぁ」


ニタニタしながら俺の隣へ来た雄大がマジでうざすぎる。


「雄大……分かってるよな」

「ははっ。そんな睨まないでくれよ」

「あ、雄大さんって言うんですね」

「言わん」

「え?」

「呼ぶな」

「いや、いつまでも『親友さん』って呼ぶのはっ……」

「不破でいい」


“雄大”呼びなんざ許さん。


「ははっ。ここまで器が小さいと、むしろ清々しいね」

「オメェは黙ってろ」

「はははっ。本当に仲が良いんですね」


そう言いながら無邪気に笑う梓。

・・・・可愛すぎんだろ、お前。

本人はこの異常な可愛さに気付いてんのか?やべえだろ、無自覚とか。

毎日、毎日、可愛くて仕方ねえっつーの。

女ってこんな可愛い生き物だっけか?とか、ごちゃごちゃ考えてる自分が死ぬほどキモすぎて、ヘドが出そうだわ。


「梓ちゃん」

「はい」