降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

怒ってるっつーより、拗ねてんじゃねーの?


「拗ねるなよ」

「拗ねてないです!!子供じゃないんで!!」


いや、怒ってるも拗ねてるも然程変わんねえか。

再びプンスカしながら先を歩く梓。

あの大人びた容姿からは想像もできねえほど、可愛らしくプンスカしてる梓が、一言で言うと『死ぬほど可愛い』それに尽きる。

具体的に梓の何が良いのか……そう聞かれても『分かんねえ』としか言えねぇ。

容姿は間違えなくイイ。実年齢より随分と大人びていて、ここまで容姿が整っている女は、俺が知る限りいねーな。

『面食いかよ』と言われたら、『まあ、そうかもな』としか言いようがねえ。


・・・・まあ、なんつーか……見た目だけじゃねえんだよな。


あの交差点で初めて梓を見かけた時、俺がっつーより、俺の“本能”が梓を求めた。

で、結局は俺自身も──。


「梓ちゃんってさ、誠のことを“ひとりの人”として扱うよね」


──── そうか……そうだな。


梓は俺を敬ったり諂ったりしない。

恐れたり、怯えたりもしない。

梓は俺のことを“ただの人”として扱う。ソレが心地良かったのかもしれねーな。

俺を見て微笑んだり、呆れた顔をしたり、時にはブツブツと怒ったりして……。