降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

──── は?


「桐生さんって私を妹か何かだと思ってますよね」


思えてたら苦労してねえっての。


「私、妹じゃないです」


いや、分かってんだよ、んなことは。

つーか……なんで機嫌悪ぃんだよ。


「怒ってんのか」

「怒ってないですよ、別に」

「怒ってんだろ」

「怒ってない」

「なんだよ」

「なんでもないです」


──── マジで分かんねえ……。


俺のことを“掴めない”だのなんだの言ってるが、俺からするとお前の方が掴めねぇんだけど。

女の顔色なんざ、いちいち伺ったことねえし。

機嫌が良いだの悪いだの、俺の知ったこっちゃなかったからな。


「好きなもん買ってやる」

「…………はい?」

「だから機嫌直せ」

「うわぁ……そりゃアウトだわ、誠」

「あ?」

「結構ですっ!!!!」


プンスカしながら先を歩く梓。

それすらも可愛いと思う俺は、どっかおかしいのか?


「つーか、なんで怒ってんだ」

「『女なんてどれも変わらん』なーんてスカしてたツケが、とうとう回ってきたね~。誠」

「あ?」

「ま、せいぜい頑張りなよ。恋愛初心者さん」

「チッ。別にそんなんじゃねぇ」