降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

コイツらには、“後悔”をして欲しくねぇんだよ。俺なんかの為に……な。

そう思って生きてきたはずだ……。なのに、カタギである梓のことが欲しくて、欲しくてたまらない。

後悔させる……間違えなく後悔しかさせられねえ。

梓のことを思うなら、俺なんかとは関わらない方がいい。


──── あの日……俺のことを避けてくれれば、諦めもついたはずだったのにな。


「あの誠がこんだけ執着するんだ。もう諦めるにも諦められそうにないだろ?」

「……まあな」

「梓ちゃんだって誠が“何者”かを知ってて、それを承知の上で関わってる。良いんじゃないか?その“事実”さえあれば」


雄大の握り拳が俺の胸にコツンッと当たって、グッと押された。まるで『大丈夫だ』と言っているように。


──── “大切なもの”……“特別”は作らないと決めていた。


「すみません!お待たせしましたぁ……って、桐生さん……?」


俺は、どうしようもなく──お前が欲しい。


「梓」

「あ、はい」


不思議そうに俺を見上げて、綺麗な瞳でジーッと見つめてくる梓。

穢れも何も知らないその綺麗な瞳に、俺はどう映ってんだろうな。