降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。



「欲しくてたまらないって顔をしているね」

「あ?」

「梓ちゃんのこと」


梓の着替え待ちをしている俺達。

全てを見透かしているような、そんな顔で微笑んでいる雄大(ゆうだい)。

『何言ってんだ。相手は高校生のガキだぞ。んなわけねぇだろ』……そう即答できない時点で、俺はどうかしてんだろうな。


「……なぁ」

「ん?」

「後悔してないか」


俺がそう言うと、呆れたような顔をして、やれやれと言いたげな表情の雄大。


「好きだね、そのセリフ」

「別に好きとかそんなんじゃねーよ」

「なら、決めゼリフかな?」

「ふざけんな」


笑いながら俺をおちょくる雄大。

コイツはそういう奴だ、昔から。


「後悔なんて死んでもしないから、僕にはもうそのセリフは必要ないかな~。というか……今、君の周りにいる人達に、そんなことを聞くのは失礼じゃないかな」

「……どういう意味だ」

「そんなの簡単なことだよ。……“誠の傍に居たい”。そう思って、自分の“意志”で君の元に居るんだ。『後悔してないか』……なんてさ、愚問だよ」


おちょくる様子もなく、真剣な眼差しで俺の目を見ている。