降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

私でいう“美冬”が、桐生さんはこの“親友さん”なんだと思う。


──── 良かった。桐生さんにも弱音を吐ける“存在”がちゃんと居て。


・・・・いや、桐生さんは弱音を吐くタイプではないか。


そう思うと、桐生さんは日頃無理をしているんじゃないか……とか、多忙なのに私がお裾分けなんかしに行ったから、面倒な関係性になったな……とか、後悔してるんじゃないかって、徐々に不安になってきた。

桐生さんは表情じゃ感情掴みづらいし、言葉で伝えてくれるタイプでもないし……というか、言葉足らずだし。

私が浮かれてるだけで、本当はめちゃくちゃ迷惑なんじゃないかな……。


「……あの、すみません。着替えてきます」

「はいは~い。いってらっしゃい」


笑顔で桐生さんと肩を組み、私に手を振る親友さん。その隣には、私の瞳を捉えて離そうとしない桐生さん。

その瞳は、すべてを見透かしそうで怖かった。


「どうした」


桐生さんは、私のちょっとした変化にも気付いてしまう。……いや、私が表情に出しすぎなのかな?あまりそういうタイプじゃなかったはずなんだけど……。

そして私は、桐生さんから目を逸らした。


「いや?なんでもないですよ~。すぐ着替えてきますね!」


桐生さんは私に『後悔してねぇか』って聞いたけど、それは私のセリフだったかもしれない。


──── 桐生さん。私との関係に後悔していませんか?