降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

『後悔してねぇか』……そう言った桐生さんの声が、少し寂しそうで、辛そうだった。

桐生さんが言う“後悔”の意味は分からない。

でも、何となくだけど……そうなんじゃないかって思ってしまった。

私は勝手にそう解釈させてもらう。


「……してない」


私がそう言うと立ち止まって、私の方へ振り向いた桐生さん。


「ん?」

「後悔なんてしてないです」


桐生さんの目を見て、ハッキリとそう言い切った。

すると、唖然としたような顔で固まった桐生さん。

最近、わりと色んな表情の桐生さんを目にする。まあ、相変わらず掴みどころはないし、ほぼ真顔だし、無表情で何を考えているのか分かんないことが多々だけど。


「私、結構気に入ってるんです。今の関係」


私がそう言うと、困ったような、呆れたような顔をして、優しく微笑む桐生さんに胸の高鳴りが抑えられない。


「酷いなぁ~、二人とも。僕を置いてきぼりにするなんて」

「知らん」

「親友の扱いが随分と雑すぎやしないか?誠~」

「知らん」

「くくっ。つれないなぁ」


心底嫌そうにしている桐生さんと、煙たがられているのがとても嬉しそうな親友さん。


・・・・桐生さん。あんな嫌そうにしてるけど、親友さんのことを凄く信用して、信頼もしてるんだろうなって、そういう雰囲気的なものが伝わってくる。