降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

ていうか、今時『男女交際禁止!!』なんてさ、ありえないよね。


「子供と思えねぇから困ってんだろ」

「……へ?」


ゆっくり近付いてくる桐生さんのご尊顔。

何がなんだか分かんないけど、咄嗟にギュッと目を瞑った。


──── なにも……起こらない……。


ゆっく~り目を開けると、頭の上にポンッと手を置かれて、髪を少しワシャワシャされた。


「アホか」

「え?」


── チンッ。


エレベーターの扉が開くと、私から離れて、扉を手で押さえている。

これは『さっさと先に降りろ』ってことだよね。


「あ、ありがとう……ございます」


色々と情報力が多すぎて、脳内はパニック寸前。

とりあえず情報を整理しなくちゃ……と、少し下を向いて歩いていた。

そんな私の隣には、私の歩幅に合わせて歩いてくれている桐生さんがいる。


「おい」  

「あっ、はい!!」


チラッと隣を見上げると、ただ前を向いて、その横顔からは何を考えているか全く読み取れなかった。


「後悔してねぇか」

「え……?」


予想外の問いに、私の足は自然と止まった。


「いや、悪い。気にするな」


横目でチラッと私を見て、先へ進む桐生さん。