降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「……えっとぉ……何がでしょうか……?」

「ははっ。『危機管理がまるでなってない』って言いたいんじゃないかな?誠は」

「あ、ああ……」


“危機管理がまるでなってない”と言われても、危機管理がある程度できていたから、ひとり暮らしが継続できている……はずなんだけど。


「危ねぇ」


『危ねぇ』……とは?

“俺達は危ない野郎だぜ?”……という意味でしょうか。

ま、まぁ……“危険な人”ではあるのか……な。

私からしたら、ただのぶっきらぼうで言葉足らずな優しい強面イケメンなんだけど。

でも……“ヤクザ”……なんだもんね……桐生さんって。


「『危ねぇ』……ですか……た、確かに……?」


私はススッと桐生さんから離れて、親友さんとも距離を取った。

すると、大爆笑し始めた親友さん。そして、更に機嫌が悪くなった桐生さん。


「やっぱ面白いね~!梓ちゃん」

「はぁぁ」


後頭部に手を当てて、めちゃくちゃ深いため息を吐く桐生さん。

おそらく私は、解釈を間違えたっぽい。


「……すみません。何やら間違えたっぽい……ですね」

「いや?まぁ、そういうことだよ?“危ない人には気を付けようね?”ってこと!ね、誠」

「チッ」