降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

心臓が飛び出そうなくらいドキドキしてるんですけど。


「ははっ。それよりいい加減、離してあげたらどうかな?どうしていいか分からず困ってるよ?梓ちゃん」

「…………悪い」

「い、いえ……」


桐生さんから解放された私は、スッと桐生さんの隣へ移動した……もちろん少し間を空けて。


「痛くなかったか」

「え?……あ、はい」

「そうか」


相変わらず真顔でぶっきらぼうな桐生さん。

強面でぶっきらぼうで言葉足らずだけど、とっても優しいんだよね。ギャップ王決定戦で優勝間違えなしだよ。

そんな桐生さんは、私の瞳をジーッと見つめて離してくれない。

私、この人に後ろから抱き締められてたんだ……とか思うと、また心臓がドキドキし始めて苦しくなる。

そもそも異性に抱き締められたりすることなんて、一度もなかったわけで……ハジメテがあの桐生だよ?そりゃ緊張もするって。


「何もされてねーか」

「……へ?」

「するわけないだろ?全く、親友を疑う君の神経を疑うね。僕は」

「何もされてねーか」


親友さんをガン無視して、私から目を逸らさない桐生さん。


「あ……はい。全く、なにも」

「……そうか」