降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

だから、“私だって通っちゃうもんね!!”っていう感じで、土日は美冬がバイトしている和菓子屋へ行くことが多い。


「美冬が考案した新作食べるの楽しみだな~」


なんて浮かれていた私の視界に入ってきたのは、遠目からでも伝わってくるほどのイケメンオーラを放つ男の人。

そして、こっちをチラッと見るなり、笑顔で手を振りながら走ってきた。

周りを見渡してみたけど、私しか居ないってことはあの人……私に手を振ってるの?


───── 近付いて来れば来るほど、全く知らない人で笑えない。



「いやぁ、年甲斐もなく走っちゃったなぁ」

「……」

「一目で分かったよ。君が梓ちゃんだって」

「……」


・・・・誰、マジで……誰っ!?


「くくっ。そんな顔しないで?僕、不審者じゃないから」


いや、不審さしかないよね?この状況は。

一体何者なの?この超絶爽やかイケメン。


「ごめんごめん。僕は誠の友人だよ」

「まこと……?」

「そそ。桐生 誠」

「あ、ああ……」


──── で、なんなの!?なんで桐生さんの友人が私に話しかけて来たの!?


・・・・これって、もしかして……品定め的な?

桐生さんの隣人として、不足はないか……みたいなやつだったりする?