降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「『煙まみれ』は余計だけど。あたし、梓からのその言葉、何年も待ってたんすけどねー」

「ゴメンナサイ」

「やっぱ今日、梓の奢りねー。異論は認めーん」

「よ、喜んで!!」


美冬は私の肩を抱いて、これでもかってくらいベチベチ叩いてきた。


・・・・ぶっちゃけ痛い。


「ねぇ、力加減バグってない!?痛いって!!」

「あははっ~。ごめんごめ~ん」

「もぉ……」


──── もっと早く、美冬に伝えれば良かった。


私がクヨクヨしていたせいで、美冬には悪いことしちゃったな……。


「梓」

「ん?」

「ありがとう。あたしと友達になってくれて」


ニヒッと笑いながら、少し照れくさそうにしている美冬。

美冬と友達になってから、もう何年も経っているけど……こんなことをドストレートに言われたのは初めてだった。


──── その言葉、こっちのセリフだよ。


「……っ。美冬ぅぅ……大好きぃぃ……!!」

「うわっ……泣くなよ……。面倒くせえ女~」

「面倒くさいって言うなら泣かせないでよ!!こんの不良娘がぁーー!!」

「声でけぇっての……」

「……あ、ごめん」


──── クスクス笑い合って、私達の仲はより一層深いものになった……そう感じる。