降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

──── あの日、美冬から何件も着信が入ってて、かけ直した──。



【あ、もしもし?ごめっ……】

【あの!!このスマホの持ち主さんとはどのようなご関係で!?】

【え……あの……友人です……私の】

【彼女、血だらけで倒れてて病院に運ばれたから!!着信履歴が殆ど君だし、一応連絡をって思って!!運ばれたのは総合病院!!じゃ、このスマホは警察に渡しておくから!!】


それだけ言って、私が返事をする間もなく一方的に切られた電話。


「……美冬が……血だらけで……意識が……ない……?」


全身から血の気が引いて、体が徐々に冷たくなっていく。

何も聞こえなくて、息もできなくて、震える体は言うことを聞いてくれない。

それでも私の体は、大切な美冬の元へと動いた。


──── 嫌、嫌だよ……美冬が居なくなるなんて、絶対に嫌!!


体が思うように動かなくて、フラフラになりながら、躓いて、何度転んだかも分からない。

ボロボロになりながら病院へ向かった。

時間的に面会なんてできないって、そんなことは分かってたけど、それでも美冬に会いたくて、今までこんなにも感情的になったことがないってほど、私は『美冬に会わせて!!』と、ただ声を荒げて泣き叫んだ。