降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「そっかぁ!ならいいや!だって月城ちゃんが来ないと美冬ちゃんも来ないっしょ~?ニコイチだもんね~」


ごめんね、ぶっちゃけ予定なんてない。

それに美冬も行くわけがない。だって美冬は、私以外の前で歌うことはないし、『梓が行かないなら行く必要ねぇだろ』ってなるタイプなのよね。

美冬はちょっと……いや、だいぶ“団体行動”が苦手。


「ははっ。ごめんね~?またタイミングが合えば」

「オッケー!また誘うわ~!!んじゃ!!」


軽快に去って、行き交う人全員に挨拶する勢いの陽キャ君。

あの陽キャ君はしつこく誘ってくるタイプではないし、下心とかも皆無タイプだと思う。

結構あっさりしてる人だから、たまーに誘いに乗って一緒に遊んだりはする。もちろん複数人で。


「まーたあのクソ陽キャかよ」

「ひっ!?……ちょ、もぉ……びっくりしたなぁ」


真後ろから急に話しかけてきた美冬に驚きつつ、そんな私を冷めた目で見ている美冬。


「朝っぱらからそんなビビる元気があるとかマジで羨ましいわー。クソだりぃー」


大きなあくびをして、朝がめっぽう弱い美冬は物凄くダルそうに歩き始めた。

そんな美冬の隣を歩いていると、避けるように通り過ぎていく人もちらほら。