降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

何故か私が不貞腐れる始末。

特に何も言わず、濡れた髪をかき上げながら私を見下ろす桐生さん。

大人の色気……というより、桐生さんの色気が凄すぎて心臓に悪い。

胸がドキドキして、爆発しちゃうんじゃないかって本気で心配になる日々。

そんな状態になっていることは、桐生さんが知るはずもなく、めちゃくちゃ距離感がバグってる時もしばしば……。

今、まさにそれ。

顔、近すぎるんですけど!!


「飯」

「……」


───── 『腹減った。今日の晩飯なに』と桐生さんは言っています。


「教えません」


私のドキドキを返して欲しい、本当に。

『免疫がないってマジでヤバいよ?みんな、気を付けてね?』と、声を大にして言いたい。

思う存分、男子とも仲良くして、恋愛もして、エンジョイして欲しい。


私にとって恋愛は────“禁断”だから。



── とある日の朝、同じクラスの陽キャ君に話しかけられた。



「おっはよ~!月城ちゃん!」

「おはよう」

「ねえ、今週の土曜なんだけどさ~。男女10人くらいでカラオケ行かね?って話になってんだけど~。どう?美冬ちゃんも一緒にさ!」

「……ああ、ごめん。私は予定あるから無理かな。美冬はどうだろう。聞いてみたら?」