降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

・・・・互いに見つめ合って、シーンッと静まり返っているこの時間と空間は一体なんなんだろう。というか、そんな整ったご尊顔で見つめられると、私の心臓が持ちそうにないんですけど。


「邪魔して悪かったな。さっさと寝ろよ」


またまた私の頭をポンポンして去っていくお隣さん。

ガチャッ……と閉まった玄関ドアを眺めて、呆然とするしかない私。


「……もしかして、妹扱いされてる?」


お隣さんはおそらく30歳前後。年の離れた妹的な感覚なのかな。頭を撫でるってそういうことだよね?多分。

何気なく紙袋の中を見ると、折り畳み傘と某高級チョコレート店の小箱が入ってて、その小箱を開けてみると、可愛らしいチョコレートが入っていた。


「こんな可愛らしいチョコレート……あのお隣さんが選んで買って来てくれたのかな……」


この可愛らしいチョコレートを買う、ぶっきらぼうな強面イケメンのお隣さんを想像すると、自然と表情が緩んでしまう。


「恐るべしギャップ…………というか、わざわざ申し訳なさすぎるでしょ、これ」


傘を貸しただけなのに、こんな高価な物を貰うのはさすがに気が引ける。

でも、一度貰った物を返すのはかなり失礼だよね……。


「どうしよう」


何かお返しできる物無いかなぁ……なにかぁ……。