降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

・・・・結局、休み時間も授業中も、お隣さんのことをひたすら考えて、気付けば下校時間になっていた……。


「じゃーね。今日あたしバイトあるから~」

「あ、うん。頑張ってね」

「うい~」


和菓子屋でバイトをしている美冬と街中で別れ、最寄りのスーパーに寄って、買い物を済ませてからマンションへ戻る。


「重た」


色々と買ったから荷物が重い、両指が千切れそう……なんて思いつつ、エントランスに着いて前を向くと、視線の先にお隣さんが居た。


──── 今までかつて会ったことなかったのに、今朝といい今といい、なんでこうも出くわすようになったのかな。


無言、無表情で私のもとへ来たお隣さん。


「こ……こんにちは」

「貸せ」

「え、ちょっ……!?」


私が両手に抱えていた荷物、それも指が千切れそうになるほど重かった荷物を、軽々と片手で持ったお隣さん。


── 私の脳裏によぎった言葉は『ゴリラ』だった。


口が裂けても本人には言えないけど。


なにも言わず歩き始めたお隣さんに、とりあえず付いて行くしかない私。


「あの……それ、自分で持ちます」

「乗れ」

「あ、はい……ありがとうございます」