降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

向かい合うように座って、お弁当を一緒に食べているのは、私の大親友でヤンキー感が否めない美冬。


「あたしに隠し事とは良い度胸してんね~」


可愛い顔とは裏腹に、美冬は俗に言う“ヤンキー”。

高校に入ってからは随分と落ち着いてはくれたけど、特に中学の頃は本当にヤンチャだった。


「……美冬。『カチコミに行くぞゴルァ!!』的なノリはやめてね?絶対に」

「はぁ?なに言ってんの、梓。てか、あたしをなんだと思ってるわけ?」

「元ヤン……というか、現ヤン」

「現ヤンでも元ヤンでもねーし。で、なんなわけ?」


パックのカフェオレを飲みながら、気だるそうにしている美冬。


「じ、実は……マンションのお隣さんが……や、や……ヤクザ……だった……」

「へーー」


どうしでも良さそうっていうか、興味が無さそうな返事をされて、私の方が驚いている。


────── え?『へーー』だけ!?


「……いや、反応薄くない!?」

「ああ、まあー、何となくぽいな~とは思ってたからね~」


いやいやいや、どういうこと!?住人である私が知らなかった事実をなんで美冬が!?


「ちょっ、それってどういうことなの!?美冬!」