降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

ただただ無性に、あの女のことを“自分だけのモノにしたい”……という衝動に駆られている。

こんなことを思うことも、感じることも、今までかつて無かった。


「…………ダメだ」



────── “特別は作らない”……そう決めただろ。



自分で決めた“縛り”が、どうしようもなく窮屈で退屈で、それが徐々に倦怠感へ変わっていく。


「はっ、馬鹿馬鹿しい」


雨音でかき消されていく俺の声。

ただ雨が落ちてくる灰色の空を見上げ、雨と共に邪念も流してくれ……そう思っていた時だった。


・・・・誰だ?


俺に向けられた視線を感じて、その視線の方へ目をやると、そこに居たのは……俺が求めていた“あの女”だった。

この俺が見間違うはずがない。

間違えなくあの女だ。


────── マジか。あれ、制服……だよな。


俺をガン見していたのは、制服を着たあの女だった。マジか……高校生かよ、お前。


・・・・いや、まあ……制服着てりゃ学生にしか見えねえ。どっからどう見ても、紛れもなく高校生だわな。


『高校生のガキなんざ論外だろ』……いつもの俺なら間違えなくこう言うだろう。

だが、俺はどうしようもなく“この高校生のガキ”が欲しくてたまらない。