降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

どうやらコイツらは“何事も無かったかのようにすれば何とかなる”……そう思っているらしい。


・・・・俺も舐められたもんだな。


まぁ良く言えば、“俺をこんな扱いにできる奴はコイツらだけ”……。つーことは、“他の奴等とは違う”ということ。

コイツらは、俺の側にいることを“この俺”が認めた奴等だ。要は信用して、信頼もしている。


「いやぁ、この前あの子っぽい女の子を見かけたんすよね~。丁度この辺で~」

「マジか」


思わず食い気味で『マジか』なんて言ったもんだから、ギョッと目を見開いて俺を見る長岡達の視線が痛い。


「マ、マジっす。で、もっと驚きなのが……あの子、まさかのジェーっ……誠さん!?」

「若っ!!」

「誠さん!!」



────── 気付いた時にはもう、体が勝手に動いていた。



信号待ちで止まっていた車から飛び出し、今この辺りに居るかも分からない“あの女”を求め彷徨う。降りしきる雨の中、傘もささずズブ濡れになりながら。


「……なにやってんだ、俺は」


冷たい雨に打たれ、分厚い雨雲に覆われた空を眺める。

浮かんでくるのはあの女のことばかり。

この感情も、謎な執着心も、何がなんだか俺には分からない。