降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「ははっ。冗談すよ、冗~談っ!!ま、20歳そこそこっぽかったすもんねぇ~」


この際、年齢なんざどうだっていい。


──── 俺は、心の奥底から無性にあの女を求めている。


「どうでもいいことをベラベラと喋んな。用件をさっさと言え」

「あ、あの若が……“どうしてもその女のことが知りたい”……だと……?」

「誠さんに、“その女が気になって仕方ない”……なんて言わせる女は一体……何者なんですか?」


・・・・どいつもこいつも、俺をおちょくってんのか?鬱陶しい。


「そんなこと一言も言ってねぇだろ。マジで黙ってろ、オメェら」


木村と船越を睨み付けると、何事も無かったかのように前を向いた。


「……いやぁ、あのぉ……そんなに期待しちゃってる誠さんには申し訳ないっすけど、そこまで大したことではないっすよ?」


ルームミラー越しに映る長岡の顔面がうざすぎて、こめかみの青筋が今にもブチ切れそうになっているのは、言うまでもない。


「あ?別に期待なんざしてねぇーよ。その減らず口、二度とたたけねぇようにしてやろうか」


ルームミラーに映る長岡の瞳の奥底を捉えると、スーッと目を逸らして何事も無かったかのようにしている。