降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。



──── 降りしきる雨の中、高そうなスーツを着て、傘もささず、雨雲が厚く覆っている空を眺めながら、気だるそうで、どこか退屈そうな表情を浮かべている男の人を見つけた。


雰囲気でなんとなく分かる。


『絶対に関わっちゃダメなタイプの大人だ』


そう頭では分かっていても心が揺らいで、どうしても目が離せなかった。


── “目を奪われる”……とは、まさにこういうことを言うんだろなって思う。


そして、目と目が合った瞬間……息を呑んで立ち止まってしまった。


すると、無表情で私を見つめながら目の前まで来て、ジーーッと私を見下ろしている。


・・・・この人、めちゃくちゃかっこいい。


少し威圧感のある強面イケメンって感じ。

で、見れば見るほど、やっぱり関わっちゃダメなタイプの大人な気がしてならない。


「お前、名前は」

「え?」

「名前」

「……あ、あの……ごめんなさい」


私が謝ると、少し目を細めた。


「あ?」


眉間にシワを寄せて、ゆっくり私の顔に近付いてくる。


・・・・言えない。名前なんて言えない、言えないよ、言えるわけがない。

だって、明らかに“普通”じゃないんだもん、この人。