鞄からタオルを取り出して、桐生さんの頭を拭こうとした時だった。
私の手を強く握って、私の目をしっかり見てくる桐生さん。
「悪い、梓。仕事でトラブった挙げ句、スマホぶっ壊れて連絡取れなかった。他の端末から連絡しても、怖がらせちまうと思って。悪かった」
「……桐生さんが無事なら何だっていいですよ」
「悪い」
きっと、『俺のせいで不安にさせて悪い』ってことだと思う。
「ほら、拭いてっ……」
「梓……誕生日おめでとう」
「……え?」
予想外の言葉に、目が点になる私。
「遅れて悪い」
「な……んで……私、教えてないのに……」
「あ?知らねぇはずがねえだろ」
──── これでまた、梅雨嫌いの要因が一つ無くなった。
私も単純だなって思うけど、それでも好きな人に『誕生日おめでとう』って言われるのは、とっても嬉しいし、“特別”で“格別”。
あんなにも“誕生日なんて無くなればいい”……そう思っていたのに、全てが覆ってしまった。
「今夜、空いてるか」
「え、あ、はい。空いてます」
「そうか」
──── それから高級ホテルでディナーして、最上階の部屋に連れて来られた。
私の手を強く握って、私の目をしっかり見てくる桐生さん。
「悪い、梓。仕事でトラブった挙げ句、スマホぶっ壊れて連絡取れなかった。他の端末から連絡しても、怖がらせちまうと思って。悪かった」
「……桐生さんが無事なら何だっていいですよ」
「悪い」
きっと、『俺のせいで不安にさせて悪い』ってことだと思う。
「ほら、拭いてっ……」
「梓……誕生日おめでとう」
「……え?」
予想外の言葉に、目が点になる私。
「遅れて悪い」
「な……んで……私、教えてないのに……」
「あ?知らねぇはずがねえだろ」
──── これでまた、梅雨嫌いの要因が一つ無くなった。
私も単純だなって思うけど、それでも好きな人に『誕生日おめでとう』って言われるのは、とっても嬉しいし、“特別”で“格別”。
あんなにも“誕生日なんて無くなればいい”……そう思っていたのに、全てが覆ってしまった。
「今夜、空いてるか」
「え、あ、はい。空いてます」
「そうか」
──── それから高級ホテルでディナーして、最上階の部屋に連れて来られた。



