降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

・・・・ええ……既読になっちゃったよぉぉーー。


《今夜は帰れそうにない。今、電話してもいいか》

《仕事お疲れ様です。はい、大丈夫です》


すると、すぐ桐生さんから電話がかかってきた。

深呼吸して、少し震える手で通話ボタンを押す。


【もしもし】

【俺はそう解釈してたんだが、梓は違うのか】


姿が見えなくても声で伝わってくる。

桐生さんの少し焦ってる顔が目に浮かんできた。

それがとても愛おしい。


【違わないです】

【そうか、ならいい】


言わなきゃ、ちゃんと……。


【あのっ、桐生さん!!私とっ……】

【俺の女になってくれ。俺だけの女に】


これは、『付き合ってくれ』ってことだよね。


【桐生さんをください】


───── 私だけのものにさせて。


【ああ。なんでもくれてやる】

【桐生さん大好き】

【梓、愛してる】


『愛してる』の一言で全身がアツくなった。


耳元で囁かれているような、そんな感覚。

胸の高鳴りが抑えきれない。

桐生さんに会いたい、早く会いたい。

明日、会えるかな。


──── 翌朝。


「今日も雨かぁ」