降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「すみません!!ごめんなさい!!」


大声で謝っている女の声が聞こえた。

再び視線を前へ戻すと、若い女がどっからともなく走ってきて、老人のもとへ向かっていた。

若い女は老人に声を掛けて、老人をおぶりなが止まっている車へ何度も頭を下げ、横断歩道を渡りきる。

別に大した光景ではない……はずなんだが、どうしても若い女から目が離せない……いや、離したくねぇとすら思う。


・・・・なんだ、この感情は。


随分と大人びてはいるが、どっからどう見ても大学生くらいの女だろ。

そんな女から目を離せないってどういうことだ?こんなにも目を奪われたことは、今までかつてない。

そもそも、女に興味を持ったことが一度もない。どれもこれも一緒にしか見えねぇし。


「いやぁ、今時の子も捨てたもんじゃないっすねぇ。つーか、めちゃくちゃ可愛くなかったすか!?美少女的な感じで!!俺、ナンパしてきていいすかね!?」


うぜぇテンション感で車を走らせている長岡。

つーか、あの女だけは誰にもやれねえ。他の野郎にやるくらいなら俺のモンにする。


────── は?


・・・・いや、なに考えてんだ……俺。すこぶる可笑しなこと言ってねぇか?