降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「えっと……」

「連絡先」

「あ、はい」


連絡先を交換して、これでいつでもどこでも桐生さんと繋がっていられると思うと、それがすごく嬉しくて、自然と顔が緩んでしまう。


「あんま可愛い顔すんな。抑えが利かなくなる」


少し困ったような顔をして、私の頭を撫でる桐生さん。


「悪かったな、時間取らせて。月城さんが帰って来てんだ。一緒にいてやれ」

「はい。ありがとうございます。また連絡しますね」

「ん」

「お邪魔しました」

「ん」


私が手を振っても、振り返してくれることはないけど、“しゃーねぇな”って感じで手を上げてくれた。


── 家に戻ると、眠そうな顔……というか、絶っ不調な顔をしているお母さんがキッチンに立っていた。


「おかえりぃーー」

「ただいま」

「美冬はーー?」

「バイト」

「そっかぁぁ。とりあえず頭痛くて死にそう」

「もぉ、調子に乗って飲むからだよ」

「それなぁー」


二日酔いの薬を飲んで、しばらくすると元気になったお母さん。


「で、誠君とはどうなったわけ?」

「どうって……」


──── あれ、どうなったんだろう。


お互いの気持ちを伝え合って、確かめ合ったのはいいけど……で?どうなったのかな。