降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

──── 桐生さん以外にいい人なんて、私の世界の中にはいない。


私に何かある度に、きっと桐生さんは自分を責めて傷付いてしまう。

それでも私を選んでくれた。

そんな桐生さんを選んだのは、紛れもなくこの私。

何もできないかもしれないけど、優しさ故に傷付いてしまう桐生さんを……少しで支えてあげたい。


「……誠。この子、大切にしてやんなよ」

「いちいち当たり前なこと言ってくんじゃねえ」


ガバッと後ろから覆い被さるように私を抱きしめてくる桐生さん。

私の肩にトンッと顎を乗せた。

・・・・気のせいかもしれない、勘違いかもしれないけど……何となく桐生さんが私に甘えているような、そんな気がして、それがとても嬉しくて……愛おしいと思えた。


「あーー無理無理!!キャラ崩壊ヤバすぎでしょ。きんっっも!!んじゃ、もう行くわ~。またね、可愛い子ちゃん」

「え、あっ……はい!!」


──── 嵐のような人だったな。


「紗英子のこと、不安にさせてたなら悪かった」

「……疑っちゃってすみません」

「いや、いい」


そう言って私から離れると、スマホを差し出してきた桐生さん。


「ん」


『ん』……とは?