降りしきる雨の中、桐生さんは傘をささない。

「後悔なんてしない。だって、こんなにも好きなんだもん……桐生さんのことが」


私は桐生さんの腕から離れて、ゆっくり振り向いた。


「梓」

「桐生さん」


見つめ合って、どっちからでもなく、私達の唇は重なった。

互いの気持ちを伝えるように、何度も何度も求め合って、甘くて深い濃厚なキスを交わす。


「はぁっ……桐生……さんっ……」

「……っ、梓……愛してる」

「私も……」


『愛してる』の言葉じゃだけじゃ足りない。もっと……もっと……って、欲張ってしまう。

きっと桐生さんも同じ気持ちで、激しさと甘さが増した口づけに、耐えられそうにない。


「……っ、待って……っ」


全身の力が抜けて、ガクンッと崩れ落ちそうになったのを、桐生さんがしっかり支えてくれた。


「悪い」


なんて言いながら、ちょっと意地悪な顔をして私の頭を優しく撫でる桐生さん。

なんか無性に恥ずかしくて、ムギュッと桐生さんに抱きついた。


「桐生さん、余裕そうでズルい」

「あ?余裕なんてあるわけねえだろ」


そう言った桐生さんの声が、本当に余裕が無さそうで、すごくドキドキする。

色っぽい表情で私を見下ろしてくる桐生さんと視線が絡み合って、吸い込まれるようにどちらともなく近付いて、私達は触れるだけの口づけをした。